今週は「小説家の新宿を歩く」の四週目で、すこしネタ切れになってきました。「村上龍を歩く」が中途半端になっていましたので、今週は「村上龍の新宿を歩く」を掲載します。違うお店を紹介するのが大変です。
<映画小説集> 「中上健次VS.村上龍、俺たちの船は、動かぬ霧の中を、纜を解いて」の中に新宿の朝の風景が書かれています。「中上健次氏と二人で、夜明けの新宿を歩いたことがある。群像新人賞の受賞パーティーで一晩飲みあかし、迎えた朝だった。最後のバーで、「じゃあ僕、お先に一人で帰ります」と、別れ、本当に一人でトボトボと西武新宿の駅まで歩いていたのだった。その日は、絶対に、誰かからタクシーで送ってもらったりせずに一人で電車で帰ろうと心に決めていた。受賞パーティーの華やかさや、銀座のおねえさん達の微笑みで、これでは自分がダメになる、一人で歩いて考えてみようと、決心していたからだ。そうやって歩いていると、中上さんが後から、「こらー、村上!」と声をかけたのだった。中上さんにしてみれば、こんな時に一人で歩く僕を不憫に思ってくれたのかも知れない。とにかく、二人でしばらく歩いた。何を話したのかは憶えていない。ただ、その時の気分は忘れない。いい気分だった。……」。このころ、村上龍は西武新宿線の新井薬師前駅の近くに住んでいました。下井草、田無と西武新宿線沿線に住む事がおおかったようです。
【村上龍】 昭和27年(1952)長崎県佐世保生れ。学校教師の長男。佐世保北高校卒業後、45年上京、横田基地近くの福生に住む。47年:武蔵野美術大学入学、現在、造形学部基礎デザイン科在学中。「限りなく透明に近いブルー」で第19回群像新人文学賞を受賞した。本名村上龍之介 (講談社「限りなく透明に近いブルー」より)
★左上の写真は村上龍の「映画小説集」の初版本です。村上龍の「69」が、高校時代の小説としたら、「映画小説集」は、東京に出てきてからの小説です。当然、新宿が数多く書かれています。
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