<安田銀行板橋支店> 犯人は帝国銀行椎名町支店で現金12万円と小切手を奪っています。この小切手の盗難手配が遅かった為、犯人は易々とこの奪った小切手を翌日換金することができます。「盗まれた小切手の手配をしたのだが、それは、すでに犯行翌日の二十七日、安田銀行板橋支店から金に換えられていたことが分った。それは、振出人森越治、金額一万七千四百五十円。裏書には「板橋三の三六六一」と犯人の筆蹟がしるされてあった。裏書人は後藤豊治だったが、これは本人が名前だけ書いていたので、犯人がデタラメの住所を、横に書き加えたのであった。この男の人相、風体について調べると、同銀行支店長代理の田川敏夫は「その男は五尺三寸前後で、肩は丸みをおび、厚みがあって、猫背ではなく、着ぶくれたような感じだった。」と述べた。」とあります。ここでは目撃証言と小切手の筆跡がポイントになります。
★右の写真が板橋本町の交差点角にある当時の安田銀行板橋支店、現在の富士銀行板橋支店です。環状七号線と中山道の交差点で、上には首都高速が走っており、排気ガスまみれの所で、あまり長くいたくない所でした。
《事件の経緯》
事 件 日 |
曜 日 |
時 間 |
発 生 事 件 |
昭和22年10月14日 |
火 |
午後3時〜4時 |
安田銀行荏原支店(未遂) |
昭和23年1月17日 |
土 |
午前10時 |
名刺注文(山口姓) |
昭和23年1月18日 |
日 |
午前 |
名刺受け取り |
昭和23年1月19日 |
月 |
午後3時〜4時 |
三菱銀行中井支店(未遂) |
昭和23年1月26日 |
月 |
午後3時〜4時 |
帝国銀行椎名町支店 |
昭和23年1月27日 |
火 |
午後3時30分 |
安田銀行板橋支店(小切手換金) |
ここで、犯人探しになるのですが、当初捜査当局は、薬学、理科学系の知識があるもの、旧軍関係、特殊学校、防疫給水隊、特務機関に勤めたもの、を中心に捜査を進めていました。しかしながら、これらに関係なく平沢貞通が犯人として逮捕されます。逮捕のポイントは厚生技官医学博士松井蔚の名刺を貰っていた(松井博士は名刺の交換先を記録していた)、小切手の筆跡、所持していた大量の現金等で、当時は戦前の法律のままで自白が重要視されており、ほとんど自白により有罪の判決が出た様です。最初にも書きましたが、遅効性の青酸カリに近い劇物は、当時としては旧陸軍研究所で開発されたアセトンシアンヒドリン(通称ニトリール)しかなく、の関連が有力です(しかし当時は占領下で、この点を追求するのは殆ど不可能だった)。そして私が気になるのは、全て山手通り沿いで起こっている事です(荏原支店も山手通りからは直ぐです、板橋本町も山手通り)。車を持って移動した様に思えます。どうでしょうか?そうすると犯人は!!
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