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最終更新日:2006年2月20日

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●谷崎潤一郎の日立を歩く 2002年12月14日 V01L04
  今週は、「谷崎潤一郎を歩く」の中ででやり残していた、「日立を歩く」と「谷崎潤一郎の食を歩く(熱海編)」をまとめて掲載します。谷崎潤一郎に関しては年表の中でも抜けているところががたくさんあります。地区的には東京以外のところの方が多くて、取材も時間が掛かりそうです。何年後になるかも分かりませんが、できるだけ早く全て掲載したいとおもっています。

<JR常磐線 日立駅海岸口>
 日立市といえは日立製作所の企業城下町としての方が有名ですね。日立市という名前に変わったのは昭和14年(1939)で、日立鉱山と日立製作所の発展により人口が増加し、産業を始めとする土地利用が密接になり、多賀郡日立町と多賀郡助川村が合併し、日立市という名前が誕生しています(日立市のホームページより)。日立駅の名前も谷崎潤一郎が訪ねた明治41年頃は常磐線助川駅といい、田舎の駅名だったようです。海岸口の駅前にある旅館も、昔のままの雰囲気です。戦災で町の70%が焼けていますので、戦後の建物とおもいますが、なかなかのものです。

左上の写真は常磐線の日立駅の海岸口です。海岸口の駅舎は平屋で、少々寂しい限りです。駅の正面は反対側の西口(?)の方で、ロータリーやイトーヨーカドー、図書館のビルなどがありますが、やはり田舎の雰囲気からは脱しきれない雰囲気です。一般的に地方は、駅前よりも車の便がよい、国道やバイパスの方が賑わっているようです。

谷崎潤一郎の日立年表

和  暦

西暦

年    表

年齢

谷崎潤一郎の足跡

作  品

明治41年 1908   22 7月 第一高等学校卒業
実家は日本橋箱崎町4丁目1番地
9月 23歳 東京帝国大学国文科入学
  
明治42年 1909   23 9月〜11月 助川会瀬 笹沼方で転地療養  

tanizaki-hitachi15w.jpg<偕楽園 別荘跡>
 谷崎潤一郎は明治42年9月、東京帝国大学国文学科に入学します。しかし翌年、自身の作品が「早稲田文学」などになかなか採用されず、失望と焦燥のあまり、強度の神経衰弱になります。当時のことを、弟 谷崎精二の「明治の日本橋、潤一郎の手紙」では「…兄としても一生涯最悪の時代だったと思う。失恋やら、貧苦やらで兄は神経衰弱になって毎夜眠られず、夜中にそっと台所へ行ってさかしお(料理に使う最下級の酒である。)をがぶがぶ飲んだ。「潤一は昨夜も夜中にさかしおを飲みに台所へ行ったな。つくづく困った奴だ。」朝になって父はよくそうぐちをいった。気が弱くなった父はもう以前のように兄にがみがみ小言をいわなくなった。……兄はたしか小学校以来の親友笹沼氏の好意で、茨城県助川町にある同氏の別荘に病気療養のため寄寓することになった。明治四十三四年の頃と思う。それから兄の放浪生活が続いた。」、とあります。この当時のことは「谷崎潤一郎の東京を歩く」に詳細に掲載していますのでそちらを参照して下さい。

左の写真が笹沼源之助の偕楽園別荘跡です。現在は個人のお宅になっており、海岸縁からすこし登った丘の上にあります。当時の表現では「常磐線助川駅下車、七町ほどあともどりして、海岸の猟師街にかこまれた小高い丘の上の別荘で、左に初崎、右に大洗を眺める景勝の地をしめている。」、とありますが、大洗海岸まで見えるのは少し大げさです。

tanizaki-hitachi16w.jpg<会瀬海岸>
 当時のことを日立市の地元文学史である川崎松壽の「日立文学散歩」では「この谷崎をこころから心配し療養のためにと会瀬海岸への天地をとりはからってくれたのは、谷崎の竹馬の友で谷崎の進学の補助者であり、……笹沼源之助である。笹沼は…日本で初めての支那料理店倶楽部偕楽園を経営し、会瀬海岸に別荘をもち、そこに母親の晩年を送らせていた。そこで笹沼は母親に連絡するかたわら、小学校時代の恩師稲葉氏の夫人をとおして、夫人の実弟である平野俊(元日立製作所戸塚工場長)から、その知己である地元の島崎昇に谷崎の世話を依頼したのである。」、とあります。周りにいる皆が谷崎潤一郎を応援していますね。

右の写真が笹沼源之助の偕楽園別荘跡から眺めた会瀬海岸の風景です。なかなか絶景ですね。


谷崎潤一郎 日立地図
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【参考文献】
・追憶の達人:嵐山光三郎、新潮社
・文人悪食:嵐山光三郎、新潮文庫
・細雪:谷崎潤一郎、新潮文庫(上、中、下)
・新潮日本文学アルバム 谷崎潤一郎:新潮社
・谷崎潤一郎「細雪」そして芦屋:芦屋市谷崎潤一郎記念館
・芦屋市谷崎潤一郎記念館パンフレット:芦屋市谷崎潤一郎記念館
・倚松庵パンフレット:神戸市都市計画局
・富田砕花断パンフレット:芦屋市谷崎潤一郎記念館
・谷崎潤一郎の阪神時代:市居義彬、曙文庫
・谷崎潤一郎--京都への愛着--:河野仁昭 京都新聞社
・伝記谷崎潤一郎:野村尚吾 六興出版
・谷崎潤一郎 風土と文学:野村尚吾 中央公論社
・神と玩具との間 昭和初期の谷崎潤一郎:秦慎平 六興出版
・倚松庵の夢:谷崎松子、中央公論社
・谷崎潤一郎全集(28巻):中央公論社(昭和41年版)
・わが道は京都岡崎から:深江浩、ナカニシヤ出版
・花は桜、魚は鯛:渡辺たをり、中公文庫
・谷崎潤一郎君のこと:津島寿一
・日立文学散歩:川崎松壽、筑波書林
・関伊三郎海外日記:関利保、第一印刷

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