●鯖の味噌煮と無縁坂(文京区湯島四丁目) 〜霜月三週目の散歩情報〜 初版1999年11月21日
今週は旧岩崎邸(三菱財閥の創設者宅)を紹介する予定でしたが少々変更して旧岩崎邸の横にある坂道を紹介したいと思います。その坂道とは「無縁坂」です。知る人ぞ知る有名な坂です。東京大学(医学部付属病院の付近、東大は旧加賀藩主前田家屋敷跡にできた)から不忍の池に出る坂道で坂の南側が旧岩崎邸となります。昔は湯島郷に属し、講安寺門前町として開かれた町屋で、今も坂の北側に講安寺があります。この坂道が有名になったのは、まず第一に「ひまわりの歌」の主題歌、さだまさし作の「無縁坂」、第二に「森鴎外」の「雁」に出で来る坂道だからです。(この小説は明治44年から大正4年まで掛かって発表しています、最初はスバル)その中でも特に有名なのは「鯖の味噌煮」です。坂道と「鯖の味噌煮」は全く関係ないじゃないかと思われるかもしれませんが、この小説のキーポイントとなる関係があります。ちょっとだけ中身を紹介しますと、作者の僕と医学部生の岡田という二人の東大生がいます。この無縁坂の近くに下宿していて、いつも散歩にこの坂道を歩いています。この坂道の途中に金貸し屋の親父の妾(お玉、20歳)が住んでいて、岡田と親しくなっています。ある時彼女は自分の思いを岡田に伝える決心をして、岡田が散歩するのを待っていました。そのときに作者の僕の下宿屋の夕食に「鯖の味噌煮」が出てくるわけです。 この僕は「鯖の味噌煮」が大嫌いで、食事をする気になれず、岡田と二人で散歩に出てしまう訳です。岡田一人ではなかったので彼女は声をかける事ができずに、又岡田も僕がいたため通り過ぎてしまうわけです、そして岡田は次の日に留学してしまいます。私が紹介すると「鯖の味噌煮」もあまり面白くありませんが、森鴎外はじつに面白くこの坂道の風景や人々を表現しています。是非とも「鯖の味噌煮」を頭に浮かべながらこの無縁坂を歩いて下さい、岡田青年になりきれるかもしれません、「雁」を是非とも一読して頂ければと思っています
「雁」で無縁坂が紹介される場面:「そのころから無縁坂の南側は岩崎邸であったが、まだ今のような巍々たる土塀で囲ってはなかった。・・・・・坂の北側はけちな家が軒をならべていて、一番体裁のいいのが、板塀を巡らせた・・・」と紹介されています。出演: 田中裕子で映画化もされています。 ・左上の写真は無縁坂の上から撮影したものです。右側が旧岩崎邸になります。
・参考文献:文京の坂道(文京区教育委員会)、雁(新潮文庫)
・交通のご案内:営団地下鉄千代田線湯島駅下車徒歩3分
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