●「天国と地獄」の酒匂川鉄橋、鎌倉 腰越を歩く(中)
2005年1月8日 <V01L02>
黒沢明監督の「”天国と地獄”を歩く」の「中」として身代金を受け渡した東海道線酒匂川鉄橋と共犯者の家があった鎌倉腰越を歩きます。映画を見たことのない人は面白くありません。
<DVD 天国と地獄> 黒沢明監督の「天国と地獄」は制作:東宝と黒澤プロダクション、配給:東宝で昭和38年3月1日に封切られています。翌年の昭和39年には東京オリンピック開催、東海道新幹線開業と日本が成長路線をひた走り出した頃になります。戦後という時代をようやく離れて、”よかかりし昭和30年代”が終わり、高度成長時代に突入します。
★左の写真が「天国と地獄」のDVDです。黒沢明監督作品のDVDはボックスであるのですが、私は個人的に好きな映画だけしか購入しませんのでバラで購入しています。この映画のクランクインは38年9月ですが、脚本を作るため1月に熱海の来の宮の旅館に45日間滞在し完成させています。都築政昭の「黒澤明と天国と地獄」では、「『天国と地獄』 には、「これが映画だ」という要素がぎっしり詰まっている。興奮し、感動した時、人はよく「手に汗握る」迫力だったと言うが、この映画は全篇まさに手に汗握る?金縛り″の凄まじい緊張で終始する。映画には文学や演劇や哲学、美術、音楽などさまざまな要素があるが、「映画はあくまで映画だ」 (「悪魔のように細心に! 天使のように大胆に!」東宝事業部)と黒澤は言う。…」、と書き出しています。 この映画は黒澤明の最も得意とする”手に汗握る”分野の映画だとおもいます。黒澤明の最も不得意な分野は家庭であり、家族ではないかとおもっています。この「天国と地獄」の最初の場面は権藤家ですが、この家庭の会話は子供の会話も含めてぎこちなく、ごく一般の家庭の雰囲気とはなっていません。小津安二郎風の家庭的な雰囲気を漂わせるのは黒澤明には難しそうです。やっぱり得意不得意はあるようですね。
【天国と地獄】 原作:エド・マクベイン「キングの身代金」 脚本:小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明 キャスト:権藤金吾‥三船敏郎、戸倉警部‥仲代達矢、権藤の秘書‥三橋達也、荒井刑事‥木村功、他
<黒沢明> 明治43年(1910)3月23日東京都品川区東大井で父勇、母シマの間に8人兄弟の末っ子として生まれる。京華学園中学校を卒業後、画家を志し美大を受験するが失敗、昭和11年P・C・L映画製作所(東宝の前身)に入社します。山本嘉次郎監督の助監督を経て、昭和18年に「姿三四郎」で監督デビュー、高い評価を受けて日本映画界のホープとなります。終戦後の昭和23年「酔いどれ天使」で三船敏郎を抜てきし以後三船敏郎は黄金期の黒澤映画に不可欠な俳優となります。昭和25年制作の「羅生門」はベネチア国際映画祭でグランプリを獲得し一躍世界の黒沢となります。平成10年9月6日、脳卒中により東京都世田谷区成城の自宅で死去、88歳でした。
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