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最終更新日:2006年2月19日

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●「きんつば」散歩 2002年3月9日 V01L03


 しばらく「食べ歩き散歩」をしておりませんでしたので、今週は庶民の和菓子第三弾として「きんつば」を歩いてみたいと思います。夏目漱石の「ぼっちゃん」のなかに金鍔(きんつば)がでてきます。「ぼっちゃん」の書き出しは「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。」で、誰もが知っていますね。金鍔が出てくるところは、「母が死んでから清は愈おれを可愛がった。時々は小供心になぜあんなに可愛がるのかと不審に思った。つまらない、廃せばいいのにと思った。気の毒だと思った。それでも清は可愛がる。折々は自分の小遣で金鍔や紅梅焼を買ってくれる。寒い夜などはひそかに蕎麦粉を仕入れて置いて、いつの間にか寐ている枕元へ蕎麦湯を持って来てくれる。時には鍋焼饂飩さえ買ってくれた。」のところです。江戸から明治時代にかけては、和菓子でも京菓子のような高級和菓子と違って庶民の三大菓子は「金つば」「大福」「桜餅」で、中でも「きんつば」は一年中食べられる手軽な和菓子だったようです。


kintsuba-11w.jpg<榮太樓總本鋪>
 現代の「きんつば」といえば東の「榮太樓總本鋪」、西の神戸「本高砂屋」ではないかと思います。両店とも歴史があり、ブランドからしても一流です。榮太樓總本鋪は「きんつば」より「甘納豆」の方が有名かもしれません。榮太樓總本鋪のホームページによると「創業は江戸安政4年(1857年)。日本橋に魚河岸があった頃孝行息子の栄太郎がそこで働く人々に屋台で名代「金鍔」を焼いて商いをしておりましたが評判を呼び繁昌し日本橋西河岸に独立店舗をひらいたのがはじめであります。その後屋号を幼名に因んで榮太樓と改め「甘名納糖」「梅ぼ志飴」「玉だれ」等を創製しました。江戸育ちの和菓子屋として今後も「味は親切にあり」の社是のもと一層励んで参ります。名代金鍔は小指の頭程の小麦粉の生地を薄く伸ばしながら生地の何倍かのこだわりの餡を包み込む。胡麻油をしいた銅板で丸い形に焼き上げ天に少量の黒胡麻をつけ出来上がり。江戸の昔からの伝統の技で今日迄つくり続けています。」とあります。我々がイメージしています高砂屋の四角い「きんつば」とは違い、江戸時代からのつばの形をした丸い金鍔です。品のよい甘さで口当たりも見た目ほど硬くなくてよく、和菓子に近い味とおもいます。四つ入ったセットで700円でした。

左の写真が日本橋一丁目の榮太樓總本鋪(本店)です。このビル自体が榮太樓總本鋪のもので、一階にお店が入っています。喫茶もありますので、一度行かれるといいとおもいます。【榮太樓總本鋪地図】


kintsuba-14w.jpg<徳太樓>
  和菓子の激戦地の浅草にあります。「きんつば」をメインの商品としているだけのことはあり、見た目(美しさ)、大きさ、食感、味、どれをとっても一流です。ひとつ食べだすと止まりません。創業は明治36年だそうで、浅草の観音様の裏手の三業地にお店をを出されています(今は三業地はありません)。「きんつば」の原料は北海道十勝産の良質小豆を、丹念に煮上げて灰汁抜きし、そして晒し、甘味を抑えて小麦粉を溶いた薄皮で、焼き上げてあります(全国和菓子協会ホームページ参照)。普通の「きんつば」と比べるとすこし小さな「きんつば」で、あっさりさっぱりした味で、薄皮が美味しくていくつでも食べられます。一個120円です。浅草に行かれた折りは、「きんつば」なら梅園等で済ませずに、少し歩きますが、「徳太樓」の「きんつば」をぜひともお土産に買ってください。

右の写真が「徳太樓」です。分かりにくい場所にあるのですが、浅草寺の裏手、言問通りを越えて80m位歩いたところです。【徳太樓地図】

kintsuba-17w.jpg<竹隆庵 岡埜>
 「岡埜栄泉」系列のお店です。「岡埜栄泉」というと豆大福なのですが、ここもやはり大福がメインの和菓子になっています。このお店の大福は「こごめ大福」といって、江戸時代に「こごめ餠」というお菓子があり、根岸の里の茶屋がこの餠に餡を包み入れ、上野輪王寺宮公弁法親王に献上したところ、お誉めの言葉を頂いて名前が「こごめ大福」となったそうです。今日は「きんつば」のお話なので、話をもどしますと「竹隆庵」さんは「大福」だけではなくて「どら焼」、「きんつば」も作られています。とくに「きんつば」は栗入りで、、浅草満願堂の「芋きんつば」とはちがう正統派の「栗入りきんつば」です。大きさは少し厚さがあるのですが、栗の食感がなかなかで、薄皮とマッチした甘さが食をそそります。美味しかった。箱入りで1000円(6個)でした。

左の写真が東京の下町、根岸にある「竹隆庵 岡埜(ちくりゅうあん おかの)」です。お店の看板も「こごめ大福」となっていますが、「栗入りきんつば」もそうとうなものです。「岡埜栄泉」のなかではぴか一の「きんつば」です。【竹隆庵 岡埜地図】

kintsuba-20w.jpg<神戸「本高砂屋」>
 「きんつば」というとやっぱり神戸「本高砂屋」です。私も小学校低学年の頃、家の近くの繁華街にあった高砂屋の店頭で「きんつば」の実演販売をガラス越しにずっと見ていた覚えがあります。四角く切った餡の一片に薄皮のもとをつけて鉄板で焼いていきます。本当に美味しそうに見えました。高砂屋の「きんつば」の箱には由来が書いてあります。「『元祖四角』、『神戸名物高砂きんつば』、明治10年、東京大学の開校と同じとしに創業した本高砂屋は、前身を紅花堂といい、現在と同じ元町三丁目で、瓦煎餅をはじめ和菓子全般を商っておりました。創業者の杉田太吉はアイデアマンでした。明治30年代初め、丸形の江戸きんつばを角形六方焼きに改良し、店頭で焼きながら売る「高砂きんつば」を考えだしたのです。」とあります。あの四角くい「きんつば」は高砂屋が本家です。焼き立てを食べると、薄皮と餡の兼ね合いが実によくて、何個でも食べたくなります。困ったものですね。少し時間を置いても、一寸焼くと薄皮が美味しくなり、出来立てと同じように食べられます。六個入りで780円、安いですね。
 
右の写真が神戸元町三丁目の本高砂屋です。写真の右手で「実演販売」しています。作りたてをその場で箱詰めしてくれます。やっぱり「きんつば」はここが一番です。【神戸 本高砂屋地図】

【お店の住所】

・榮太樓總本鋪:東京都中央区日本橋1-2-5 ??03-3271-7781
・徳太樓:東京都台東区浅草3-36-2 ??03-3874-4073
・竹隆庵 岡埜:東京都台東区根岸4-7-2 ??03-3873-4617
・神戸「本高砂屋」:神戸市中央区元町通3-2-11 ??078-331-7367

【参考文献】
・明治の文豪(CD-ROM版):新潮社
・文人悪食:嵐山光三郎、新潮文庫
 
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