しばらく「食べ歩き散歩」をしておりませんでしたので、今週は庶民の和菓子第三弾として「きんつば」を歩いてみたいと思います。夏目漱石の「ぼっちゃん」のなかに金鍔(きんつば)がでてきます。「ぼっちゃん」の書き出しは「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。」で、誰もが知っていますね。金鍔が出てくるところは、「母が死んでから清は愈おれを可愛がった。時々は小供心になぜあんなに可愛がるのかと不審に思った。つまらない、廃せばいいのにと思った。気の毒だと思った。それでも清は可愛がる。折々は自分の小遣で金鍔や紅梅焼を買ってくれる。寒い夜などはひそかに蕎麦粉を仕入れて置いて、いつの間にか寐ている枕元へ蕎麦湯を持って来てくれる。時には鍋焼饂飩さえ買ってくれた。」のところです。江戸から明治時代にかけては、和菓子でも京菓子のような高級和菓子と違って庶民の三大菓子は「金つば」「大福」「桜餅」で、中でも「きんつば」は一年中食べられる手軽な和菓子だったようです。
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