<千葉県市川市菅野1124番地>
荷風は五叟宅のラジオの音などに耐えきれず昭和22年1月すぐ近くの小西宅に引っ越します。しかしこの小西宅でも小西氏と旨くやっていけなくなります。やむを得ず昭和23年12月、菅野の中古住宅を購入し、一人住まいを始めます。今週も高橋俊夫さんの「葛飾の永井荷風」と「断腸亭日乗」を参考にします。まず断腸亭日乗の昭和23年12月からです。
「…十二月十三日。快晴。温暖春の如し。午後小林氏と共に八幡の登記所に至り売主代理人と会見し家産の登記をなす。……。然るに余が年末に至り突然家主より追立てられ途法に暮れをるを見て気の毒に思ひその老母と共に周旋すること頗懇切なり。今の世にも親切かくの如き人あるは意想外といふべし。小林氏の老母はなほ心あたりをさがして女中になるぺきものを求めて後引越の世話をすぺしと言ふ。
菅野一,一二四番地平家建瓦葺家屋十八坪金参拾弐万円。登記印紙代二千四百円。登記証記載金高五万円。…」。
市川市菅野1124番地は小西宅からは約900m、最寄り駅になる京成八幡駅からも900m強ありました。少し遠いです。駅まで歩くと、10分から15分位掛かります。
★写真は現在の菅野二丁目9番地付近です。この先の左側になります(直接の写真は控えさせて頂きました)。当時の住宅地図に名前が掲載されていますので間違いないとおもわれます。建物も何回か建て直されており、昔の面影はありません。道の幅だけが昔のままとおもいます。