kurenaidan30.gif kurenaidan-11.gif
 ▲トップページ著作権とリンクについてメール

最終更新日:2006年2月19日

 2001年1月1日 V01L03 

 ”知らざあ言って聞かせやしょう  浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜、その白浪の夜働き、以前を言やあ江ノ島で、年季勤めの稚児が淵、百味講で散らす蒔き銭をあてに小皿の一文字、百が二百と賽銭の,くすね銭せえ段々に、悪事はのぼる上の宮、岩本院で講中の、枕捜しも度重なり、お手長講と札付きに、とうとう島を追い出され、それから若衆の美人局、ここやかしこの寺島で、小耳に聞いた爺さんの、似ぬ声色でこゆすりたかり名せえゆかりの弁天小僧菊之助たぁ俺がことだぁ!”はご存じ、白波五人男の一人「弁天小僧菊之助」が歌舞伎の「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)、浜松屋の場」で諸肌脱いで言うセリフです 。カッコいいですね!!
今回は東海道を股にかけた大泥棒、白波五人男を取り上げてみます。

shiranami3.jpg 歌舞伎の”白波五人男”とは、「河竹黙阿弥」の作で5人の大泥棒が主人公で文久3年3月(1862)に初めて市村座で上演されています。
 このモデルとなったのは、延享4年(1747)に獄門になった日本左衛門の一味です。日本左衛門は尾張藩の下級武士の息子で本名は浜島庄兵衛といい、数十人の泥棒一家を引き連れて、遠州の豊田郡貴平村に本拠を構えて東海八ヶ国中心にを荒しまわったと伝えられます。歌舞伎では特に盗賊の中心人物であった五人を白波五人男(弁天小僧菊之助、南郷力丸、日本駄右衛門、忠信利平、赤星十三)としています。

左の写真は 日本左衛門が打ち首になった江戸伝馬町です。日本橋ビル街の真ん中にあり現在は公園になっています。

<見付宿>
 地元の代官所では手に負えないため、幕府直轄の捕物として、江戸火付盗賊改めの徳山五兵衛が、同心22名を卒いて延享3年に地元の捕り方の応援を得て、金谷、掛川、見付、浜松に大捜査網を敷きました。しかし、日本左衛門は支配者の異なる旗本知行地を転々として、見附から美濃、大阪へと逃走しましたが最後に京都町奉行所へ自首しています。延享4年3月(1747)日本左衛門は江戸伝馬町で処刑され、首は見附三本松の仕置場にさらされました。見付宿は東海道53次のほぼ真ん中にあり、江戸から28番目の宿場町として栄えています。古い町並みの商家の中には江戸時代から続く家もあり、至る所に歴史の面影を残しています。

右の写真は見付の三本松です。袋井から国道一号線を磐田へ向かって走り(バイパスは通らず)磐田市に入ったところで、右側の小高い岡の上に”遠州鈴ケ森”と書いてある看板が見えます。ここが三本松です。


<金谷の宅円庵>
 首は見附の三本松の仕置き場にさらされました。その首を愛人三好ゆきが盗み出し、金谷宿川会所跡の南にある宅円庵に葬ったといわれ、今も日本左衛門の墓と「月の出るあたりは弥陀の浄土かな」の句碑があります。

左の写真は宅円庵の日本左衛門の墓です。丁度大井川鉄道の新金谷駅の裏にあり、駅には蒸気機関車が複数台停まっていました。

<青砥稿花紅彩画(白波五人男) 二幕五場>
二 幕 五 場 内 容
序幕 雪の下浜松屋の場 弁天小僧菊之助が上記の口上を語る有名な場面があります。
稲瀬川勢揃いの場 稲瀬川で勢ぞろいした五人は群がる捕手をはらいのけながら、口上を順次語ります。
二幕目 極楽寺屋根立腹の場 弁天小僧は極楽寺山門の屋根に追い詰められ、自害します。
極楽寺山門の場
滑川土橋の場 南郷、赤星、忠信とも捕われ、日本駄右衛門は名奉行の青砥藤綱の縄にかかります。

<稲瀬川勢揃いの場の口上>
 弁天小僧菊之助の口上もなかなかいいですが、「稲瀬川勢揃いの場」の五人の口上は迫力がありますね!!
 

 問われて名乗るもおこがましいが、産まれは遠州浜松在、十四の年から親に放れ、身の生業も白浪の沖を越えたる夜働き、盗みはすれど非道はせず、人に情を掛川から金谷をかけて宿々で、義賊と噂高札に廻る配附の盥越し、危ねえその身の境界も最早四十に、人間の定めはわずか五十年、六十余州に隠れのねえ賊徒の首領日本駄右衛門。


 さてその次は江の島の岩本院の児あがり、ふだん着慣れし振袖から髷も島田に由井ヶ浜、打ち込む浪にしっぽりと女に化けた美人局、油断のならぬ小娘も小袋坂に身の破れ、悪い浮名も竜の口土の牢へも二度三度、だんだん越える鳥居数、八幡様の氏子にて鎌倉無宿と肩書も、島に育ってその名さえ、弁天小僧菊之助。


 続いて次に控えしは月の武蔵の江戸そだち、幼児の折から手癖が悪く、抜参りからぐれ出して、旅をかせぎに西国を廻って首尾も吉野山、まぶな仕事も大峰に足をとめたる奈良の京、碁打と言って寺々や豪家へ入り込み、盗んだる金が御嶽の罪科は、蹴抜の塔の二重三重、重なる悪事に高飛びなし、後を隠せし判官の御名前騙りの忠信利平。


 またその次に列なるは、以前は武家の中小姓、故主のために切り取りも、鈍き刃の腰越や砥上ヶ原に身の錆を磨ぎなおしても抜き兼ねる、盗み心の深翠り、柳の都谷七郷、花水橋の切取りから、今牛若と名も高く、忍ぶ姿も人の目に月影ヶ谷神輿ヶ嶽、今日ぞ命の明け方に消ゆる間近き星月夜、その名も赤星十三郎。


 どんじりに控えしは、潮風荒き小ゆるぎの磯馴の松の曲りなり、人となったる浜そだち、仁義の道も白川の夜船へ乗り込む船盗人、波にきらめく稲妻の白刃に脅す人殺し、背負って立たれぬ罪科は、その身に重き虎ヶ石、悪事千里というからはどうで終いは木の空と覚悟は予て鴫立沢、しかし哀れは身に知らぬ念仏嫌えな南郷力丸。

何回聞いてもいい口上ですね!!

小伝馬町付近地図


 新金谷地図

【参考文献】
・白波五人男:鈴木輝一郎 双葉社

【交通のご案内】

・伝馬町牢屋敷:営団地下鉄日比谷線「小伝馬町駅」下車
・見付の三本松:JR東海道線「磐田駅」下車
・金谷宅円庵:大井川鉄道「新金谷駅」下車

【見学について】
・伝馬町牢屋敷:中央区日本橋本町4-5
・見付の三本松:静岡県磐田市富士見町
・金谷宅円庵:静岡県榛原郡金屋町

 ▲トップページページ先頭 著作権とリンクについて メール