今回は第129回直木三十五賞(2003年8月)を受賞された石田衣良の「4TEEN」を歩いてみました。東京月島の中学生達が超高層マンションと、戦災を免れた戦前の家並みが共存する古くて新しい街を自転車で駆け抜けていきます。
今年の直木賞の選考について、オール讀物9月号から引用すると、「第129回直木三十五賞選考会は、平成14年12月から同15年5月の間に発表された諸雑誌、単行本のなかから選ばれた下記六作品を候補作として、平成15年7月17日午後5時より、東京築地の新喜楽において開かれました。今春、委員在任中に急逝された黒岩重吾委員に献杯の後、阿刀田高、五木寛之、井上ひさし、北方謙三、田辺聖子、津本陽、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光、渡辺淳一の全委員出席のもと、慎重な審議がおこなわれ、右作品が受賞と決定いたしました。詳しくは各委員の選評をごらんください。」、とあります。なかなかの選考委員メンバーです。特に五木寛之の選評を読むと、「”才気と熱気”、石田衣良さんの『4TEEN フォーティーン』は、ホームランではないが、走者一掃の二塁打といった感じのライナー性のヒットである。風俗が新鮮で人情が昔風、そこがおもしろい。月島という、都会の故郷ともいうべき土地への喪失感が、失われてゆく十代への感傷と重なって、いい感じだ。私は学生時代に月島で新聞配達をして働いていたことがあるので、ふと感傷をそそられるものがあった。採点が少し甘くなったのは、そのせいだろう。いずれにせよ、才気が才能に実っていくにちがいない作家だと思う。」、ホームランバッターは一発屋ですから、三割アベレージバッターのほうが読む方は期待する機会が多くていいですね。さすがの五木寛之です。五木寛之が月島で業界紙の配達をしていたころの話も掲載する予定ですので御期待ください。
★左の写真は新潮社版の初版本4TEENです。今年の5月が初版です。今買うと版数は上がってしまっていますので、初版本を買うには、どの作家が次の芥川賞か、直木賞か見定めるのがたいへんです。
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