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最終更新日:2020年10月20日

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●《村上春樹の世界》西宮を歩く
 初版2002年04月13日
 二版2004年04月30日 夙川の西側の住居を修正
 三版2004年07月19日 明石寿司と阪神香櫨園駅の写真を追加
 四版2005年06月19日 夙川の東側の住居を修正 
<V01L03>
 五版2020年10月19日 甲陽学院に赴任した時期を修正  
<V01L01>

 今回は「村上春樹の世界を歩く」の第二弾として1997年5月に書かれた「辺境・近境」の”神戸まで歩く”に沿って彼が小学校から高校まで辿った道を歩いてみました。特に今回は村上春樹が小学校時代を過ごした兵庫県西宮市の夙川付近を歩いてみたいと思います。場所的には西宮市は大阪と神戸のちょうど真ん中辺りです。

【阪神間の地図】←クリックすると地図がでます。

甲陽学院中学校>
京都生まれの村上春樹が神戸に住むきっかけは父親が私立甲陽学院中学校の国語の先生になったからです。このことは甲陽学院同窓会報の「甲陽だより 64号」のなかに「甲陽学院で教鞭をとられた村上千秋先生のご子息と知ったときはビックリしました…」と書かれています。またその時代のことを「辺境・近境」の書き出しでは「僕は戸籍上は京都の生まれだが、すぐに兵庫県西宮市の夙川というところに移り、まもなくとなりの芦屋市に引っ越し、十代の大半をここで送った。高校は神戸の山の手にあったので、したがって遊びにいくのは当然神戸のダウンタウン、三宮あたりということになる。そのようにしてひとりの典型的な「阪神間少年」ができあがる。当時の阪神間は−もちろん今でもそうなのかもしれないけれど −少年期から青年期を送るには、なかなか気持ちの良い場所だった。静かでのんびりとしていて、どことなく自由な雰囲気があり、海や山といった自然にも恵まれ、すぐ近くに大きな都会もあった。コンサートに出かけたり、古本屋で安いペーパーバックを漁ったり、ジャズ喫茶に入り浸ったり、アートシアターでヌーヴェルヴァーグの映画を見ることもできた。洋服といえばもちろんVANジャケットだった。」と思いめぐらせています。私も神戸生まれであり、この雰囲気がなんとなくわかります。甲陽学院は阪神間の学校では灘、六甲とつづく東大進学の三大私立と呼ばれていま した。

左の写真は私立甲陽学院中学校の旧正門です。現在は隣に新しい建物が建てられて、そちらが校舎となっています。

最初の住居跡(夙川の西側)>
(2020年10月19日甲陽学院に赴任した日時を修正)
当時の住いのことを村上春樹は「村上朝日堂」のなかで「僕は物心ついてから高校を出るまでに二回しか引越しをしなかった。不満である。もっとたくさん引越しをしたかった。それに二回引越したといっても、直線距離にして一キロほどの地域を行ったり来たりしていただけである。こんなのって引越しとも言えない。兵庫県西宮市の夙川の西側から東側へ、そして次に芦屋市芦屋川の東側へと移っただけのことである。」と書いており、これから最初の住いが夙川の西側と分かります。一方「小説新潮」のなかで村上春樹は「…家の前に川があって、そこに落っこちたんですね。」とも言っています。当時は甲陽学園の母体である白鹿酒造の社宅が学校の山側にあり、社宅の前は細い川(小川程度)が流れていました。夙川の西側の住いというのは、白鹿酒造(甲陽学院の母体)の社宅に住んでいたと考えられます。(この件についてはIさんよりメールを頂き、白鹿酒造で調べて戴いたところ、昭和24年9月以降に賃貸記録があるそうです、つまり、ご家族が引越されたのは昭和24年9月になります、4月から9月までは京都から通勤していたのではないでしょうか?)

左の写真が白鹿酒造の社宅があったところです。社宅があった場所は写真の左側ですが、現在は駐車場になっており、写真の右側に川(小川?)があり、今は大きな側溝となっています。

和  暦

西暦

年    表

年齢

村上春樹、西宮を歩く

昭和24年
1949
NATO発足
下山事件
0
1月 村上春樹生まれる
4月 父親が私立甲陽学院中学校の国語の先生になる
9月頃 家族、京都から兵庫県西宮市に転居(夙川の西側)
昭和29年
1954
スエズ動乱
5
4月 香炉園小学校入学、夙川の東側に転居?

西宮神社>
村上春樹は「辺境・近境」ではまず阪神電鉄の西宮駅に降り立ちます。「ゴム底のウォーキング・シューズをはき、ノートと小さなカメラをショルダー・バッグに入れ、阪神西宮駅で降りて、そこを出発点として西に向かってゆっくりと歩き始める。サングラスが必要なほどの好天気だった。まず南口にある商店街を抜ける。小学生の頃、自転車に乗ってよくここまで買い物に来た。……商店街を抜けて通りを渡ると、そこには西宮の戎神社がある。……子供の頃よく小海老釣りをした他の古い石橋は(紐をつけた空き瓶にうどん粉の餌を入れて水の中に落としておくと、小海老が入ってくる。適当にそれを引き上げる。簡単だ)…」とあります。

左の写真が西宮神社です。関西では親しみをこめて「えべっさん」といいます。お祭りは正月が終わった1月10日で十日戎と呼ばれています。村上春樹がよく通った西宮駅(現在は高架になっている)や南口商店街と小海老を釣って遊んだ西宮神社の石橋の写真をリンクしておきます。


明石寿司>
村上春樹は西宮駅から夙川まで歩きます。「西宮から、夙川まで歩く。正午までにはまだ間がある。足早に歩くと、少し汗ばんでくるくらいの陽気だ。自分が今どのあたりを歩いているか、地図を見るまでもなく見当はつくのだけれど、ひとつひとつの通りには見覚えがない。かつてよく歩いたはずの道なのに、さっばり記憶がないのだ。…海のほうに向けて少し歩き、近くの小さな寿司屋に入る。日曜日の昼なので、出前の注文で忙しそうだ。」と「辺境・近境」では書いています。上に書かれた寿司屋さんは「辺境・近境 写真集」の方にお店の名前がでています。夙川のことを「今の芦屋や夙川のあたりからは、昔の面影がずいぶん消えてしまったような気がします。ほんものの海がなくなったのもさびしいですし…」ともいっています。夙川は桜が満開でしたが天候が悪くて写真が今一歩でした。

やっと明石寿司の写真を撮影してきました。お昼の時間に訪ねたのですが残念ながらお店は締まっていました。しばらく開いていない感じでした。ついでに阪神香櫨園駅の写真も撮影してきました。駅が新しくなり昔の面影が少なくなったのは残念です。(04/07/19追加)。

夙川の東側の住居跡> 05年06月19日修正
小学校に通っていた頃に住んでいたのが夙川の東側です。「辺境・近境」のなかでは「僕がかつて住んでいた夙川近くの古い家もなくなっていた。あとにはタウンハウスのようなものが建ち並んでいた。近くにあった高校のグラウンドは、…」とあります。近くにあった高校とは、当時は西宮市立西宮高等学校しかありません。西宮高等学校は昭和43年に西宮市高座町に移転しており、現在の敷地は兵庫県立西宮香風高等学校になっています。井上義夫の「村上春樹と日本の記憶」ではこの住いの住所を記載しています(旧住居表示ですが)。又、当時の住宅地図に記載がありました。当時の地図をよくよく見ると、この写真の後ろ側に西宮高校のグランドがありました(現在は川添公園になっています)。

左の写真の左側付近が夙川の東側の住いがあったところです。上記に書かれている”タウンハウス”とは左側の写真に写っているマンションだとおもいます。昭和33年の住宅地図をみると、手前の角から夙川まで6軒の家が並んでいました。現在の夙川の角は香櫨園教会となっていますが、当時はありませんでした。村上一家は手前から2軒目、夙川から5軒目とおもわれます。(マンションの所になります)

香櫨園小学校>
村上春樹が通っていた小学校のことについては名称まではっきり言っています。「夢のサーフシティー」のなかのホームぺージで「僕が小学生のころ、兵庫県西宮市立香炉園小学校では秋になると、給食にときどき「まつたけうどん」がでました。もちろん本物のまつたけ(けっこう大きい)が入っていて、だしには香ばしい松茸の香りがしました。うちの奥さん(東京小石川出身)にその話をすると「嘘だよ、そんなの」と言うけど、ほんとなんです。 」といっています。私も神戸の小学校に通っていましたが、「まつたけうどん」なんか出たことは一度もありませんでした。西宮市や芦屋市は裕福だったのかな〜〜。

右の写真が村上春樹が通っていた香櫨園小学校です。

次回は芦屋を歩いてみたいと思います。


兵庫県西宮市夙川付近地図
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【参考文献】
・風の歌を聴け:村上春樹、講談社文庫
・1973年のピンボール:村上春樹、講談社文庫
・羊をめぐる冒険(上、下):村上春樹、講談社文庫
・世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上、下):村上春樹、新潮文庫
・ダンス・ダンス・ダンス:村上春樹、講談社文庫
・ノルウェイの森(上、下):村上春樹、講談社文庫
・さらば国分寺書店のオババ:椎名誠、新潮文庫
・村上朝日堂:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂の逆襲:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂はいかにして鍛えられたか:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂 はいほー!:村上春樹、新潮文庫
・辺境・近境:村上春樹、新潮文庫
・夢のサーフシティー(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・スメルジャコフ対織田信長家臣団(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・村上春樹スタディーズ(01−05):栗坪良樹、拓植光彦、若草書房
・イエローページ 村上春樹:加藤典洋、荒地出版
・イアン・ブマルの日本探訪:イアン・ブルマ(石井信平訳)、TBSブリタニカ
・村上春樹の世界(東京偏1968−1997):ゼスト
・村上春樹を歩く:浦澄彬、彩流社
・村上春樹と日本の「記憶」:井上義夫、新潮社
・象が平原に還った日:久居つばき、新潮社
・ねじまき鳥の探し方:久居つばき、太田出版
・ノンフィクションと華麗な虚偽:久居つばき、マガジンハウス
・ユリイカ 総特集 村上春樹を読む:青土社

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