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最終更新日:2006年2月22日

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●《村上春樹の世界》神戸を歩く

  初版02/04/27
  二版03/01/26 阪急六甲駅前のマックの場所を更新
  三版04/07/19 ハッピー食堂の写真を追加
  四版05/08/28 デリカテッセンの写真を追加 <V01L02> 阪急六甲駅のマクドナルドはなくなりました。

 今回は村上春樹が高校生時代を過ごした阪急芦屋川駅から神戸市内を歩いてみたいと思います。今回で村上春樹の故郷、”西宮から神戸を歩く”の最後回となります。

 吉本ばななの「B級BANANA」を読んでいたら、村上春樹のことが書かれていました。吉本ばななへ「古今東西の人物をかき集めて、人気の出そうな野球チームを作って下さい。強くなくても大丈夫」という質問をしているのですが、吉本ばななが回答した野球チームは「監督:糸井重里、投手:三上博史、捕手:石原良純、一塁:王貞治、二塁:ドカベンの殿馬、三塁:長島茂雄、遊撃:ダニエル・デイ・ルイス、右翼:真田広之、中堅:村上春樹、左翼:水原勇気、DH:サエキけんぞう、伝令:吉田栄作」となっていました。吉本ばななの好きなタイプを集めた言いようの無い……チームですね、村上春樹は足が速いから中堅なのでしょうか、マラソン選手は決して短距離は速くありません。また村上春樹のことを、住所は「実は日本」、職業は「同業」、年齢は「もうすぐナイスミドル」、趣味は「はしる」、癖は「仕事」と書いています。この二人はどういう関係なのでしょうか!

【阪神間の地図】←クリックすると地図がでます。

兵庫県立神戸高等学校>
 村上春樹が通った高校が兵庫県立神戸高等学校です。昔でいうと一中なので兵庫県下の公立ではトップということになります。この神戸高校については村上春樹の小説やエッセイのなかでたびたび登場します。ここでは「国境の南、太陽の西」で登場する神戸高校を紹介したいと思います。「彼女は僕を放課後に学校の屋上に呼んだ。「ねえ、ハジメくん、あなたコンドームを西田くんからもらったんだって?」と彼女は言った。彼女は(コンドーム)という言葉をひどく言いにくそうに発音した。彼女が(コンドーム)と言うと、それはなんだかひどい疫病をもたらす不道徳な徴菌のように聞こえた。………僕らは屋上の隅にある小さな石のベンチに並んで腰を下ろしていた。今にも雨が降りだしそうな天気だったから、屋上には僕らの他には誰もいなかった。あたりは本当にしんとしていた。屋上がそんなに静かに感じられたのは初めてだった。学校は山の上にあって、その屋上からは町と海とが一望のもとに見渡せた。僕らは一度放送部の部屋から古いレコードを十枚ばかりくすねてきて、それを屋上からフリスビーみたいに飛ばしたことがあった。」とあります。

左上の写真が神戸高校の正門です。神戸は山と海に挟まれた狭い地域のなかにある町で、海に近いところ以外は全て坂道です。特に神戸高校は六甲山の山懐にあり坂を上り詰めた先にあります、景色は絶景なんです。

和  暦

西暦

年    表

年齢

村上春樹、神戸を歩く

昭和39年
1964
東京オリンピック
15
4月 兵庫県立神戸高校入学
昭和43年
1968
エンタープライズ寄港阻止衝突
パリ5月革命
19
4月 一浪して早稲田大学第一文学部演劇科入学

ハッピー食堂跡> 04/07/19追加
 村上春樹は「辺境・近境」の写真集で登場する食堂です。「神戸市東灘区本山北町 ハッピー食堂には残念ながらまだ入ったことがない」、写真集なのでこれしか書いていません。場所を探すのに苦労したのですが、写真集をよく見ると森北町四丁目8番と写っていました。

左の写真の右側が「ハッピー食堂」です。正確にはハッピー食堂跡です。阪急神戸線のすぐ上で、甲南山手駅から5〜6分でした。


ローソン>
 村上春樹は「辺境・近境」で、二日目の阪急芦屋川駅から神戸に向かう途中で阪急岡本駅近くのローソンに立ち寄っています。「朝六時に起きて、ラッシュアワーの前に阪急電車で芦屋川駅に出る。そしてそこから、ささやかな徒歩旅行の続きにとりかかる。……となりの阪急岡本駅に着いたら、そこでどこでもいいから喫茶店に入ってモーニング・サービスの朝食でも食べようと思う。考えてみれば朝から何も食べていないのだ。でも実際には、朝から開いている喫茶店なんてどこにも見あたらなかった。そうだ、ここはそういう種類の町ではないのだ。しかたなく国道沿いのローソンでカロリーメイトを買い、公園のベンチに座ってひとり黙々とそれを食べる。そして缶入りのコーヒーを飲む。これまでの道のりで目にしたものごとについてのメモを取る。それから一服して、ポケットに入れてきたヘミングウェイの『目はまた昇る』の続きを何ページか読む。」と書いています。ここで書かれているローソンは国道沿い(国道二号線のことか)となっていますが、国道沿いにはローソンはなく、山手幹線沿いにある「ローソン本山北店」と思われます。岡本駅から5分くらいのところです(20年もたったら「村上春樹立ち寄りのお店」という記念碑が建ったりして!!)。 

左上の写真が「ローソン本山北店」。住所は兵庫県神戸市東灘区本山北町3−121−3ですので近くに行かれたときは写真でもどうですか、将来有名な場所になるかも?


阪急六甲駅>
 村上春樹は岡本のローソンでカロリーメイトを食べてからもモーニング・サービスを探し続けています。「その次の御影駅にも、残念ながらモーニング・サービスは存在しなかった。僕は温かい濃いコーヒーと、バターを塗った厚切りのトーストを深く夢見ながら阪急電車の線路に沿って黙々と歩き続け、………おそらく。阪急六甲駅前で、ささやかに妥協をしてマクドナルドに入り、エッグマフィン・セット(三百六十円)を注文し、深い海鳴りのような飢えをようやく満たし、三十分の休憩をとる。時計は九時を指している。朝の九時にマクドナルドに入っていると、自分が巨大な(マクドナルド的な)仮想現実の一部に組み込まれたみたいに感じられる。あるいは集合的無意識の一部になつたみたいに。でも実際に僕を囲んでいるのは、あくまで個別的な現実である。考えるまでもなく。個別性が、良くも悪くも、一時的に行き場を見失っているだけのことなのだ。」なにか、マグドナルドに入る理由をいろいろ考えているようです(村上春樹がマックでは…‥なのかな!!)。一寸前(2004頃?)まではマクドナルドは阪急六甲駅構内の改札口の右横にあたのですが、現在は無くなっています。当時のマクドナルドの場所については「B.F.と踊れ」さんからメールを頂きました。ありがとうございました。右の写真の左側のビル(屋上に”みなと銀行”と中程に”宇山眼科”の看板のあるビルです)の地下にあったそうです。村上春樹の書いている”阪急六甲駅前”が正しそうです。

右上の写真は阪急六甲駅から山側を写したものです。坂道がすごいのがわかると思います。神戸高校行きのバスは左のところから出て、正面の坂を上がっていきます。

神戸高校前>
 村上春樹は神戸高校までバスで通っていたようです。「せっかくここまで来たのだからと思い、額にうっすらと汗をかきながら急な坂道を上って、昔通った高校まで歩いてみる。いつもは満員バスに乗って通っていた道を、ゆっくりと自分の足で歩く。山の斜面を平らにしてつくられた広いグラウンドでは、女子生徒が体育の授業でハンドボールをやっている。あたりはいやにしんと静まり返っていて、彼女たちの発するときおりのかけ声のほかには、物音はほとんど聞こえない。あまりにも静かなので、何かの加減で間違えた空間のレベルに入り込んでしまったみたいな気がするほどだ。どうしてこんなにも静かなのだろう?遥か眼下に鈍色に光る神戸港を見おろしながら、遠い昔のこだまが聞こえないものかと、耳をじっと澄ませてみる。でも何も僕の耳 には届かない。ポール・サイモンの古い歌の歌詞を借りれば、そこにはただ沈黙の響きが聞こえる だけだ。まあ、しかたない。なにしろすべては三十年以上も前の話なのだから。」とあります。私が神戸高校を訪ねたときは、ラクビー部がグラ ンドで練習をしていました。地震の影響でしょうか、校舎も正面入口部分をのぞいて建て直されていました。

左上の写真が神戸高校前のバス停留所です。村上春樹が通った芦屋西蔵町から神戸高校までの通学路を考えてみました。「いつも満員バスにのって通っていた」と書かれていますので、阪急六甲駅から神戸高校まではバス通学です。そうすると芦屋川駅から阪急六甲駅までは電車通学、芦屋川駅から西蔵町まではバスということになります。ほとんど歩かない、かなり贅沢な通学路だったようです。普通は阪急王子公園駅から歩いていた学生が多かった様に思います(私も、高校時代に何回か 訪ねたことがありますが、王子公園から坂道を歩いていました)。

ピノッキオ>
 村上春樹の「辺境・近境」では最後に神戸市内で食事をしています。「ようやく三宮の街に戻り着く。………散歩がてら山の手の小さなレストランまで歩く。ひとりでカウンターに座ってシーフード・ピザを注文し、生ビールを飲む。一人の客は僕しかいない。気のせいかもしれないが、その店に入っている僕以外の人々はみんなとても幸福そうに見える。恋人たちはいかにも仲が良さそうだし、グループでやってきた男女は大きな声で楽しそうに笑っている。たまにそういう日がある。運ばれてきたシーフード・ピザには「あなたの召し上がるピザは、当店の958,816枚目のピザです」という小さな紙片がついている。その数字の意味がしばらくのあいだうまく呑み込めない。958,816? 僕はそこにいったいどのようなメッセージを読みとるべきなのだろう? そういえばガールフレンドと何度かこの店に来て、同じように冷たいビールを飲み、番号のついた焼きたてのピザを食べた。僕らは将来についていろんなことを話した。そこで口にされたすべての予測は、どれもこれも見事に外れてしまったけれど……。でもそれは大昔の話だ。……」。私も同じようにビールを飲み、小さな紙片がついたビザを食べてきました。このお店は神戸では結構有名なお店で、私も昔から何度もいった記憶があります。今回食べたピザには1,051,514枚目と書かれていました。つまり、村上春樹が食べてから92,698枚目に私が食べたことになります。
 
右上の写真が小さな紙片がついたビザです。このお店は山手通りにある「ピノッキオ」といい、なかなか感じのよいお店です。

神戸時代の村上春樹について、わからない事が幾つかあります。大学へは一浪しています。両親の希望で国立大学ということで、浪人したようですので、受験した学校が知りたいです。またその時の予備校は何処に通ったのか。特にその時代の友人やガールフレンドのことがもう少しわかれば、今の村上春樹が分かる様な気がします。高校時代の友人が村上春樹について語ってくれれば全て解決なのですか、もう少し時間がかかるかな!

この後、村上春樹は東京へ旅立ちます。

デリカテッセン> 四版05/08/28 デリカテッセンの写真を追加
 村上春樹の「辺境・近境」には書かれていませんが、「ダンス・ダンス・ダンス」の中でで書かれている神戸のお店を紹介しておきます。「…「そろそろ昼飯を作ろうかなと思ってたんだ。ばりっとした調教済みのレタスとスモーク・サーモンと剃刀の刃のように薄く切って氷水でさらした玉葱とホースラディッシュ・マスタードを使ってサンドイッチを作る。紀ノ国屋のバター・フレンチがスモーク・サーモンのサンドイッチにはよくあうんだ。うまくいくと神戸のデリカテッセン・サンドイッチ・スタンドのスモーク・サーモン・サンドイッチに近い味になる。うまくいかないこともある。しかし目標があり、試行錯誤があって物事は初めて成し遂げられる」 「馬鹿みたい」 「でも美味しい」と僕は言った。…」。トアロードに昔からあるお店でかなり有名です。「風の歌を聴け」の地図の方にも書いておきました。
 
右上の写真が神戸の「デリカテッセン」です。サンドイッチの写真を載せておきます。


神戸市灘区・東灘区地図
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兵庫県神戸市三宮付近地図


【お店の住所】
・ピノッキオ:兵庫県神戸市中央区中山手通2-3-1 電話:078-331-3330

【参考文献】
・風の歌を聴け:村上春樹、講談社文庫
・1973年のピンボール:村上春樹、講談社文庫
・羊をめぐる冒険(上、下):村上春樹、講談社文庫
・世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上、下):村上春樹、新潮文庫
・ダンス・ダンス・ダンス:村上春樹、講談社文庫
・ノルウェイの森(上、下):村上春樹、講談社文庫
・さらば国分寺書店のオババ:椎名誠、新潮文庫
・村上朝日堂:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂の逆襲:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂はいかにして鍛えられたか:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂 はいほー!:村上春樹、新潮文庫
・辺境・近境:村上春樹、新潮文庫
・夢のサーフシティー(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・スメルジャコフ対織田信長家臣団(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・村上春樹スタディーズ(01−05):栗坪良樹、拓植光彦、若草書房
・イエローページ 村上春樹:加藤典洋、荒地出版
・イアン・ブマルの日本探訪:イアン・ブルマ(石井信平訳)、TBSブリタニカ
・村上春樹の世界(東京偏1968−1997):ゼスト
・村上春樹を歩く:浦澄彬、彩流社
・村上春樹と日本の「記憶」:井上義夫、新潮社
・象が平原に還った日:久居つばき、新潮社
・ねじまき鳥の探し方:久居つばき、太田出版
・ノンフィクションと華麗な虚偽:久居つばき、マガジンハウス
・ユリイカ 総特集 村上春樹を読む:青土社
・B級BANANA:吉本ばなな、角川文庫
 

 
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