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最終更新日:2006年2月22日

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●アフターダーク(afterdark)を歩く
   初版04/09/18 <V02L02> 写真を追加

 今週はすこし大衆に迎合して村上春樹の新刊本「アフターダーク(afterdark)」を歩いてみました。ところは明らかに渋谷界隈なのですが所在のお店とはぴったりは当てはまりませんでした。近いところを想定しながら紹介したいとおもいます。休日の渋谷散歩の参考にして頂ければとおもいます。

 以前にも紹介しましたが、村上春樹は”風景”そのものです。柄谷行人が書いている、「…村上春樹の「風景」が支配的となった…」、が今回の「afterdark」にもあらわれています。「…私たちは「デニーズ」 の店内にいる。面白みはないけれど必要十分な照明、無表情なインテリアと食器、経営工学のスペシャリストたちによって細部まで緻密に計算されたフロアプラン、小さな音で流れる無害なバックグラウンド・ミュージック、正確にマニュアルどおりの応対をするように訓練された店員たち。「ようこそデニーズにいらっしゃいました」。店はどこをとっても、交換可能な匿名的事物によって成立している。……「ここではチキンサラダしか食べない。決まってるんだ。僕に言わせてもらえれば、デニーズで食べる価値があるのはチキンサラダくらいだよ。メニューにあるものはおおかた試してみたけどさ。君はここでチキンサラダ食べたことある?」 マリは首を振る。「悪くないよ。チキンサラダと、かりかりに焼いたトースト。デニーズではそれしか食べない」……」。「afterdark」の書き出しではありませんが、場面はデニーズがら始まります。私も渋谷のデニーズで同じメニューを食べようと思いましたが、残念ながら”チキンサラダ”がもうメニューにはありませんでした。村上春樹がこの小説を書いたのは昨年の11月から12月はじめにかけてでしょうから、そのころは”チキンサラダ”はあったようです。(この小説の時期は、「…高橋は腕時計に目をやる。「…季節は秋の終わり… …今の季節だと、そうだな、6時40分くらいじゃないかな。いちばん夜が長い季節だからね、あとしばらくは暗いよ」…」、と言っていますので11月〜12月頃だとおもいます。村上春樹自信もデニーズで食べたのだとおもいます。)

左上の写真はデニーズのトースト、シーザーサラダ、コーヒーです。チキンサラダがメニューになかったので代わりにシーザーサラダを頼みました。そこそこ美味しかったですよ。〆て900円でした。セット物を頼めば安かったのでしょうが取材ということで奮発してしまいました。渋谷のデニーズの場所は二カ所で、一番ピッタリするのは、「渋谷公園通り店」なのですが、このお店は8月に開店したばかりのお店です。もう一軒は少し離れて明治通りのやや原宿寄りの、昔からある、「原宿店」となります。デニーズ「原宿店」の明治通りを挟んだ向かい側には「スカイラークガーデンズ」もあります。こちらはイタリアンですね。

右の写真はこの本の題名になっているオリジナル曲です。「…「中学生のときに、中古レコード屋で 『ブルースエット』 っていうジャズのレコードをたまたま買ったんだよ。古い古いLP。どうしてそんなもの買ったのかなあ。思い出せない。ジャズなんてそれまで聴いたこともなかったからさ。でもとにかく、A面の一曲めに 『ファイブスポット・アフターダーク』 っていう曲が入っていて、これがひしひしといいんだ。トロンボーンを吹いてるのがカーティス・フラーだ。初めて聴いたとき、両方の目からうろこがぽろぽろ落ちるような気がしたね。そうだ、これが僕の楽器だって思った。僕とトロンボーン。運命の出会い」 男は 『ファイブスポット・アフターダーク』 の最初の八小節をハミングする。「知ってるよ、それ」とマリは言う。 彼はわけがわからないという顔をする。「知ってる?」…」二人が言葉を交わしているこのフレーズはこの本の中で私が一番気に入っているところです。まさに、村上春樹そのもの、最高です!!

渋谷駅前>
 「afterdark」の場所の設定ですが、ヒントがたくさん書かれていました。「…繁華街と呼ばれる地域。ビルの壁面に取り付けられたいくつもの巨大なディジタル・スクリーンは真夜中を境に沈黙に入るが、店頭のスピーカーはまだヒップホップ・ミュージックの誇張された低音をひるむことなくたたき出している。…最終電車に乗り遅れないように、急ぎ足でスクランブル交差点を渡っていくサラリーマン。…」、これだけでも”渋谷ハチ公前”と解ります。マリの実家が”日吉”で、翌朝、”急行電車”で帰るための改札口の場面がありますが、東急東横線家渋谷駅ということが解ります。

左の写真は渋谷駅ハチ公前のスクランブル交差点を渋谷駅側から撮影したものです。巨大なデジタルスクリーンが渋谷駅ハチ公前には三カ所あります。(写真には二カ所写っています)。


『アルファヴィル』への階段>
 ラブホの「アルファヴィル」が登場するのですが、実在するかなとおもって探してみましたが残念ながら存在しませんでした。ただ、次の文面に書かれていた”ラブホに通じる階段”は存在しました。「…二人は歩き続ける。繁華街から逸れて細い道に入り、坂道を上っていく。カオルは足早に歩き、マリはそれについていく。人気のないうす暗い階段を上り、別の通りに出る。階段が通りと通りを結ぶ近道になっているらしい。いくつかのスナックの看板にはまだ明かりがついているが、人の気配はまるで感じられない。「そこのラブホだよ」とカオルは言う。「ラブホ?」「ラブホテル。カップル・ホテル。要するに、連れ込み。『アルファヴィル』 ってネオンの看板が出てるだろ? あれだよ」…」。私の知っている限りでは渋谷の階段はここだけだとおもいます。

右の写真が「アルファヴィル」に通じる階段として設定されているところとおもいます。場所的には渋谷のラブホ街といえば円山町が有名なのですが、その手前の道玄坂二丁目にある階段です。(この階段を知っている人は○○にいったことのある人ですね!!)

スターバックス>
 白川が電話で答えている中にスターバックスが登場します。「…「11時過ぎね。そのときは夜食をとりに外に出てたんだ。それからスターバックスに寄って、マキアートを飲んだ。君はずっと起きてたの?」…」。渋谷にはスターバックスはたくさんあります。場所を特定するのに、ラブホに近いこと、後に登場するセブンイレブンに近いということで選定しました。あくまでも私の推定ですが、東急本店前の「渋谷文化村通り店」としました。(左の写真を拡大するとお店の写真になります)。

左の写真はスターバックスの”キャラメルマキアート”です。フォームミルクがたっぷりのったバニラ風味のラテにキャラメルをトッピングしたものです。マキアートにはもう一つエスプレッソ マキアートもあります。高橋はエスプレッソ マキアートの方を頼んだのではないかと創造しています。

セブンイレブン>
 白川はタクシーで自宅へ帰る途中にセブンイレブンに買い物に寄ります。「…彼はそれからふと思い出す。「……ああそうだ。忘れるところだった。その先の交差点を右に曲がって、セブンイレブンの前で停めてくれないかな。女房に頼まれた買い物があるんだ。すぐに終わるから」 運転手はルームミラーに向かって話しかける。「お客さん、あそこを右に曲がると一方通行がありまして、ちっと遠回りになります。…」。渋谷にはセブンイレブンは数軒しかしりません。上記に書かれている右に曲がって一方通行という道を考えると「渋谷円山町店」しか有りませんでした。ただし、白川はここで”タカナシのローファット牛乳パック”を買うのですが、現在はローファット牛乳パックとしてはセブンイレブンブランドしかおいていませんでした。これから考えると白川の会社は東急本店前から神山町へ向かう途中にあるのではないかと考えました。白川は奪った携帯電話をこのお店に起きます。高橋もこのセブンイレブンで牛乳を買っていますが、その時にこの携帯に応答しています。高橋とマリが話した公園はここから少し離れたデニーズの「渋谷公園通り店」の裏の「北谷公園」ではなかったかなとおもいます。

左の写真はセブンイレブンの「渋谷円山町店」です。東急本店から松濤二丁目交差点方面に少し入ったところにあります。

昭和シェルのガソリンスタンド>
 白川はセブンイレブンに寄ったあと哲学堂の自宅へ帰ります。「…「じゃあこれから一路、哲学堂に向かいます」 「少し寝るかもしれないから、近くに着いたら起こしてもらえるかな?」と白川は言う。「通り沿いに昭和シェルのガソリンスタンドがあって、その少し先なんだけど」。…」。哲学堂の近くに昭和シェルのガソリンスタンドがあるのかとおもって探しました。すると、哲学堂の横にセルフの昭和シェルのガソリンスタンドがありました。本当だったのです。

右の写真が哲学堂の横にあるセルフの昭和シェルのガソリンスタンドです。哲学堂公園は右の森のところです。

あまり解説してしまうと面白くありませんので、あとは自分で読んでください。


<渋谷付近地図>



【参考文献】
・風の歌を聴け:村上春樹、講談社文庫
・1973年のピンボール:村上春樹、講談社文庫
・羊をめぐる冒険(上、下):村上春樹、講談社文庫
・世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上、下):村上春樹、新潮文庫
・ダンス・ダンス・ダンス:村上春樹、講談社文庫
・ノルウェイの森(上、下):村上春樹、講談社文庫
・さらば国分寺書店のオババ:椎名誠、新潮文庫
・村上朝日堂:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂の逆襲:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂はいかにして鍛えられたか:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた:村上春樹、新潮文庫
・村上朝日堂 はいほー!:村上春樹、新潮文庫
・辺境・近境:村上春樹、新潮文庫
・夢のサーフシティー(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・スメルジャコフ対織田信長家臣団(CD−ROM版):村上春樹、朝日新聞
・村上春樹スタディーズ(01−05):栗坪良樹、拓植光彦、若草書房
・イエローページ 村上春樹:加藤典洋、荒地出版
・イアン・ブマルの日本探訪:イアン・ブルマ(石井信平訳)、TBSブリタニカ
・村上春樹の世界(東京偏1968−1997):ゼスト
・村上春樹を歩く:浦澄彬、彩流社
・村上春樹と日本の「記憶」:井上義夫、新潮社
・象が平原に還った日:久居つばき、新潮社
・ねじまき鳥の探し方:久居つばき、太田出版
・ノンフィクションと華麗な虚偽:久居つばき、マガジンハウス
・アフターダーク:村上春樹、講談社
 

 
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