<太宰治「津軽」>
太宰治の「津軽」については、書かれた本も多く、また、ホームページも数限りなくあります。Googleで検索すると、8万件以上ヒットします。あえて掲載するかなともおもったのですが、究極の「太宰治の津軽を歩く」を掲載することにしました。しかしながら今回の取材でもまだまだ不足のところが多く、時間が掛かりそうです。
まずは太宰治の「津軽」の書き出しからです。
「 津軽の雪
こな雪 つぶ雪 わた雪 みづ雪 かた雪 ざらめ雪 こほり雪
(東奥年鑑より)
序編
或るとしの春、私は、生れてはじめて本州北端、津軽半島を凡そ三週間ほどかかつて一周したのであるが、それは、私の三十幾年の生涯に於いて、かなり重要な事件の一つであつた。私は津軽に生れ、さうして二十年間、津軽に於いて育ちながら、金木、五所川原、青森、弘前、浅虫、大鰐、それだけの町を見ただけで、その他の町村に就いては少しも知るところが無かつたのである。…」。
【津軽の雪の種類について】
こな雪 :さらさに乾いた湿気のない雪
つぶ雪 :粒状の雪
わた雪
:綿のような雪
みづ雪 :水分の多い雪
かた雪 :積雪が氷結して固くなつたもの
ざらめ雪 :雪が結晶を繰返して粒子が見えるようになつたもの
こほり雪 :氷結して硬くなり氷に近い状態
この「津軽」は小山書店の新風土記叢書として発刊されています。昭和19年11月の発刊です。新風土記叢書は第一編が宇野浩二の「大阪」で、「熊野路」、「佐渡」、「出雲・石見」、「日向」と発刊され、第七編として「津軽」が発刊されますす。数が合いませんね。「津軽」の前は五編しがありません。無くなったのは戦後発刊された稲垣足穂の「明石」です。昭和19年11月の東京空襲で、神田錦町にあった日本出版配給統制会社の倉庫が焼け、印刷されていた「明石」が焼けてしまい、発刊することができなくなったからです。同じ発刊月だった「津軽」は既に発送済みで助かっています。
★写真は新潮文庫の「津軽」です。斜陽館の前にあるお土産屋さん「北川本店」で購入したものです。何か記念にとおもって購入しました。もっとも、この本は何処で買っても同じなのですが、裏に「北川本店」のラベルが貼ってあったので、買った場所が分かるとおもって購入しました。初版は昭和26年11月です(私が買った本は95版でした)。昭和24年に八雲書店で太宰治全集が発刊されていますので、戦後はこの全集に掲載されたのが初めてではないかとおもいます。