
太宰治は昭和14年1月、石原美知子さんと正式に結婚します。結婚式は東京でしたが、新婚家庭は甲府で過ごします。そして9月になると東京の三鷹に転居します。今回は三鷹市立図書館編集の「三鷹文学散歩」と津島美知子さんの「回想の太宰治」を参考にして歩いてみました。最初は「回想の太宰治」からです。
「…昭和十四年九月一日から太宰は東京府北多摩郡三鷹村下連雀の住民となった。六畳四畳半三畳の三部屋に、玄関、縁側、風呂場がついた十二坪半ほどの小さな借家ではあるが、新築なのと、日当たりのよいことが取柄であった。太宰は菓子折の蓋を利用して、戸籍名と筆名とを毛筆で並ペて書いて標札にして玄関の左の柱にうちつけた。門柱ぎわの百日紅が枝さきにクレープペーパーで造ったような花をつけていた。南側は庭につづいて遥か向こうの大家さんの家を囲む木立まで畑で、赤い唐辛子や、夙にゆれる芋の葉
が印象的だった。西側も畠で夕陽は地平線すれすれに落ちるまで、三畳の茶の間とお勝手に容赦なく射し込んだ。引越しの翌日太宰は荻窪に荷物のひきとりに行った。昨秋御坂に出発するとき、下宿にあった物を井伏家に預かっていただい三年も経っていたし、丸屋質店の倉庫に入っているものもあった。…」。
太宰は東京で暮らしたかったようです。やっぱり東京がいいんですね。奥様の美知子さんが”門柱ぎわの百日紅”と書いていますが、この百日紅は現在は井心亭(せいしんてい)に移されていますので、百日紅の写真を掲載しておきます。又、丸屋質店と書かれていますが、この質屋は荻窪にある質屋で、”まるや質店”が正しい名前です。
★写真は三鷹、平和通りです。右側が井心亭(せいしんてい)、左側の少し入ったところに太宰治宅跡があります。個人のお宅ですので直接の写真は控えさせて頂きました。
「三鷹文学散歩」はamazon等では購入出来ないとおもいます。「日本の古本屋」で古本の購入は出来ますが、改版されていますので三鷹図書館等で購入されるのが一番良いとおもいます。