<上海游記>
芥川龍之介は大正10年3月28日から7月17日頃まで中国各地を訪問しています。大阪毎日新聞社海外視察員としての訪問で、この訪問記を「上海游記」、「江南游記」としてまとめています。現在、上海游記を讀には講談社学芸文庫か、芥川龍之介全集しかないようです。
講談社文芸文庫 「芥川龍之介 上海游記」より
「 芥川龍之介の紀行文
伊藤棲一
紀行文というのは、その紀行文の発表された時から、三十年、五十年と年月を経てしまぅと、書かれている事物、風俗等が色視せてしまって、年代の新しい人たちの読物としては、興味を失わせてしまうのではないか、と、私は紀行文学の性格について漠然と思っていたが、このたび芥川龍之介の「上海港記」「江南源記」ほかに親しみながら、実は私の考、蒜妃菱で、紀行文は古くなるほど、かえって新鮮な、格別な味わいをうけとらせてくれるのだ、ということを発見した。
むろん、これには、芥川龍之介のような、達眼、達筆の人の紀行だから、価値がふえこそすれ古びないのだ、と、いえるのかもしれないが、ともかく、芥川龍之介の紀行記事のみずみずしさ、たのしさには、申し分なく魅き込まれてしまう。ことに上海紀行の明暗こもごもの影絵をみるような世界、そのみごとな描出の手法。…」。
芥川龍之介の文章は読ませますね、読ませますと言うよりは、読み進めさせると言ったほうが良いのかもしれません。谷崎潤一郎も固有名詞の使い方がうまいですが、芥川龍之介も固有名詞の使い方が上手で、現地を訪問したいとおもわせます。
★左上の写真は講談社学芸文庫「上海游記、江南游記」です.。芥川龍之介の年譜も入っています。上海訪問にはかかけない一冊です。